
研修を受けただけでは、仕事は変わりません。この講座で学んだことを、実際の業務で回せるようにするための最後の回です。EC担当者が毎週数字を確認し、自分で改善案を出せる状態を、90日でつくっていきます。
今回の結論:最初の30日で現状を整理し、次の30日で一つの施策を実行し、最後の30日で結果を見て仕組みとして残す。
90日を3つの段階に分ける
担当者を育てるときにありがちなのが、あれもこれもと同時に始めて、どれも定着しないことです。90日を30日ずつの3段階に分け、それぞれの段階でやることを絞ります。各段階で使う講座の回も示しておくので、読み返しながら進めてください。
図解の内容を文章で確認する
1〜30日は業務・権限・利益・数字を整理して課題を一つ選びます。31〜60日は一つの施策を実行し、毎週記録と振り返りを行います。61〜90日は前後を比較して継続を判断し、手順書を残して代行者が試します。
1〜30日目:現状を整理する
最初の30日は、新しいことを始めるより、今の状態を見える形にすることに使います。業務の一覧と判断の権限を作り(第1回)、商品ごとの利益余力を計算し(第2回)、ECの目的と5項目を整理します(第3回)。
そのうえで、毎週見る数字を決め、数字を取れる状態にします。最後に、次の30日で取り組む課題を一つだけ選びます。主力商品のページを直す、集客の主軸を決めて動かす、問い合わせの返信を整える、などです。選ぶ基準は、お客様の困りごとが大きく、担当者の時間で取り組める大きさであることです。
31〜60日目:一つの施策を実行する
選んだ課題に、一つの施策で取り組みます。商品ページの改善(第5回)、集客の経路づくり(第7回)、少額の広告テスト(第9回)、AIを使った作業の効率化(第10回)など、課題に合うものを選びます。
この段階で一番大事なのは、同時に何種類も変えないことです。変えるのは一度に1か所にし、変えた日と内容を記録します。毎週の数字を1枚にまとめ、経営者との15分の会議で、続けるか直すかを確認します。思ったような結果が出なくても、それは失敗ではなく、次の判断の材料です。
61〜90日目:結果を見て仕組みにする
最後の30日は、実行した施策の前と後を比べます。数字の変化だけでなく、かかった費用と作業時間も確認し、「続ける」「やめる」「やり方を変えて続ける」を決めます(第8回)。
続けると決めたものは、担当者以外でも回せるように手順書に残します(第6回)。AIを使う作業があれば、社内ルールに沿っているかも確認します(第11回)。そして、担当者以外の人がその手順で一度やってみます。誰がやっても同じように回るなら、それは個人の頑張りではなく、会社の仕組みになったということです。
30日ごとの完成条件と、遅れたときの調整
- 30日:業務一覧・権限表・主力商品の採算表・週報がそろい、経営者と次の課題を一つ選べる。
- 60日:一つの改善を実施し、変更日・費用・作業時間・前後の条件を記録できる。
- 90日:続けるかどうかの理由を説明し、代行者が手順書で通常案件一件を処理し、例外は相談先へ渡せる。
繁忙期や兼任業務で時間が足りない場合は、課題を小さくするか期間を延ばします。90日で必ず売上が伸びるという約束ではありません。記録、判断、引き継ぎができたかを評価し、次の90日は残った課題から一つ選びます。販売を始める会社は、第4回の公開前確認と第6回の受注手順を先に完了してください。
内製する仕事と外部に頼む仕事
担当者を育てるといっても、すべてを社内でやる必要はありません。毎日の商品の更新や数字の確認は、社内でできるようにした方が改善が速く回ります。一方で、複雑なシステムの改修や、法律の判断が必要なことまで、担当者一人に背負わせる必要はありません。
判断の目安は、どれくらいの頻度で発生するか、身につけるのにどれくらい時間がかかるか、失敗したときの影響の大きさです。小さな会社に必要なのは、全部を自力でやることではなく、何を社内で判断できるかを増やすことです。外部に頼むときも、何を頼み、どう確かめるかは社内で決められるようにしておきます。
90日後に目指す担当者の姿
90日後に目指すのは、ECの専門家ではありません。自社の数字を毎週同じ形で見て、変化に気づき、根拠を添えて改善案を出せる担当者です。分からないことは分からないと言い、経営者が判断すべきことは経営者に返せる。それができれば、担当者として十分に自立しています。
私はWeb制作と自社EC運営の実務を通じて、知識を読むことと、実際の仕事で使うことには距離があると感じています。教えた知識が現場で使えるかどうかは、受け取った人が自分で手を動かせるかにかかっています。この講座の各回に「自社でやってみる課題」があるのは、そのためです。
そのまま使えるAI入力例
次の架空の会社情報をもとに、EC担当者の90日計画の下書きを作ってください。1〜30日・31〜60日・61〜90日に分け、各段階で「やること」「確認する数字」「経営者との確認の場」を書いてください。素材にない施策は追加せず、選択肢が必要な所は「要相談」としてください。素材:雑貨のEC、担当者は兼任で週6時間、主力商品は5つ、課題は商品ページへの問い合わせが多いこと。
自社でやってみる課題
90日の計画を経営者と担当者で共有し、30日ごとの到達目標と、週15分の振り返りの日時を決めてください。
理解度・実践チェックリスト
- □ 30日ごとの到達目標が明確になっている
- □ 最初に取り組む課題を一つ選んだ
- □ 毎週見る数字と記録の形を決めた
- □ 施策は一度に1か所ずつ変えている
- □ 続けるものを手順書に残し、代わりの人で試した
- □ 社内でやる仕事と外部に頼む仕事を分けた