
ShopifyはECを始める有力な選択肢ですが、導入そのものが目的になってはいけません。何を売り、注文の後に誰が何をするのかを先に決めておくと、公開後の後戻りが大きく減ります。
今回の結論:Shopifyを契約する前に、「ECの目的」と「商品・在庫・発送・決済・担当者」の5項目を、A4一枚に整理する。
自社にとってのECの役割を一文で決める
同じ「ECを始めたい」でも、目的は会社によって違います。全国の新しいお客様に知ってもらいたいのか、店舗に来ているお客様が家から再注文できるようにしたいのか、取引先からの注文をまとめたいのか。目的が違えば、必要な機能も、力を入れるべき作業も変わります。
まず「自社のECは、誰に、何を、どうしてもらうための場所か」を一文で書いてみてください。たとえば「近隣の常連のお客様が、店に来なくても定番商品を再注文できる場所」のようにです。この一文が、後で機能やデザインに迷ったときの判断基準になります。
販売の入口を増やしすぎない
自社サイト、ショッピングモール、SNSのショップ機能、実店舗。販売の入口を増やせば、売れる機会は増えそうに見えます。しかし入口が増えるほど、在庫の管理、価格の統一、問い合わせの窓口も増えていきます。担当者が少ない会社では、在庫の食い違いや対応漏れがすぐに起こります。
小さな会社は、限られた力を一か所に集める方が成果につながりやすくなります。最初は入口を一つに絞り、そこで「注文から発送まで」を無理なく回せるようになってから、次の入口を検討してください。既存の店舗や卸がある会社は、ECだけの価格や在庫のルールが必要かどうかも、この段階で確認します。
契約前に決める5項目
① 何を売るか。最初に並べる商品の数、色やサイズなどの選択肢、返品の可能性を確認します。最初から全商品を並べる必要はありません。主力の商品を少数選び、商品ページを丁寧に作る方が、改善もしやすくなります。
② 在庫を誰が管理するか。入荷したとき、売れたとき、欠品したときに、誰がどこの数字を更新するかを決めます。店舗と在庫を共有するなら、ECで売れた分をどう取り置くかも決めておきます。
③ どこから、どう発送するか。発送する場所、注文から発送までの日数、梱包の方法、複数の商品を同じ箱に入れられるかを確認します。送料は第2回で計算した利益余力に直結します。
④ どう決済するか。使う決済方法、手数料、入金されるまでの期間を確認します。入金のタイミングは、仕入れや資金繰りにも影響します。
⑤ 誰が管理するか。商品の登録、注文の確認、問い合わせへの返信、数字の確認を、誰が担当し、誰が承認するかを決めます。第1回で作った業務一覧と権限表をそのまま使えます。
決まっていない項目があっても構いません。その場合は「誰が、いつまでに決めるか」を書いておきます。空欄のまま進めないことが大切です。
図解の内容を文章で確認する
中心はECの目的です。①商品数・選択肢・返品、②在庫の入荷・欠品・取り置き、③発送場所・日数・同梱、④決済方法・手数料・入金、⑤担当者の権限・承認・窓口を、その目的に合わせて決めます。
見た目は運用が決まってから
EC構築では、デザインから考え始めたくなります。しかし5項目が曖昧なままデザインを作り込むと、公開直前になって「この商品は同梱できない」「この地域は送料が違う」といった例外が次々に見つかり、ページの作り直しが発生します。
ODBはWeb制作に長く関わってきましたが、自社ECを運営してみて実感するのは、売れるかどうかを分けるのは見た目の作り込みより、商品の伝え方と、注文の後の対応だということです。見た目は、運用が決まった後からでも十分に整えられます。
Shopifyが合うかを条件で比較する
自社ブランドの見せ方や顧客との継続的な関係を重視するなら、自社ストアは候補になります。ただし、集客は別に設計します。すでにモールの顧客へ販売している会社は、移行で失う売上と運営負荷を比較してください。取引先ごとの掛け払い、特殊な配送、複雑な商品選択が必要なら、標準機能で足りるかを契約前に実際の注文例で確認します。
導入判断票には、必須条件・標準機能でできること・追加費用・担当者・未解決事項を一行ずつ書きます。重要な条件が未解決なら、公開日を先に約束せず、検証の期限を決めます。
プランとアプリは必要になってから
Shopifyはプランによって、使える機能やスタッフのアカウント数などの条件が異なります。費用だけで決めず、何人がログインして作業するのかも確認してください。最新の条件は必ず公式の情報で確認します。
アプリを入れると機能は増えますが、月額の費用と、設定や更新を確認する手間も増えます。最初は標準の機能で運営し、実際に困った業務が出てきてから、その業務を解決するアプリを検討する方が、費用も管理も抑えられます。
複数の社員が管理画面で作業する場合は、スタッフユーザーを追加できるプランかを確認します。外部のShopifyパートナーに与えるコラボレーターアクセスは、社内スタッフの代わりに使うものではありません。Shopify公式:各プランのユーザー数で契約前に確認してください。
そのまま使えるAI入力例
次の架空の会社情報をもとに、EC開始前に決める5項目(商品・在庫・発送・決済・担当者)の整理表を作ってください。決まっていない項目は「要確認」とし、決める責任者と期限の欄を空けておいてください。新しい方針を勝手に追加しないでください。素材:従業員6人の雑貨店、実店舗あり、主力商品は10種類、発送は店舗から、担当者は兼任で週6時間。
自社でやってみる課題
ECの目的を一文で書き、5項目の現状をA4一枚にまとめてください。決まっていない項目には、決める責任者と期限を書きます。
理解度・実践チェックリスト
- □ ECの目的を一文で説明できる
- □ 最初の販売の入口を一つに絞った
- □ 最初に並べる商品と在庫の管理方法が決まっている
- □ 発送の方法と担当者が決まっている
- □ 決済の手数料と入金の条件を確認した
- □ 作業する人数に合ったプランを検討した